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更新日:2025年2月26日
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令和7年第1回県議会定例会の開会に当たり、提出いたしました議案等の説明に先立ち、県政運営に関する所信の一端を申し上げます。
最近の世界情勢を見ますと、自国第一主義や保護貿易を掲げる米国トランプ大統領の通商政策や、ウクライナ・中東情勢などをめぐり、国際情勢は激しく揺れ動き、世界経済の不透明感の増大や、国際社会の分断の加速を懸念する声が広がっております。
こうした中、国際社会における我が国の経済的地位は凋落の一途を辿っており、昨年公表された2023年の1人当たり名目GDPは、主要国中最下位に低迷し、韓国を下回る結果となるなど、厳しさを増しております。
国内においては、円安などによる物価高が依然として事業経営や家計に影響を及ぼす中、いわゆる「2024年問題」をはじめとして、急激な人口減少による人手不足の影響が、社会の様々な場面で顕在化いたしました。
さらに、日本人の出生数は、初めて80万人割れした2022年からわずか2年で70万人を下回る見通しとされ、少子化がかつてないスピードで進行しています。加えて、本年は「団塊の世代」が全員75歳以上の後期高齢者となる年を迎えるなど、超高齢社会が進展し、生産年齢人口の急激な減少に拍車がかかっております。
働き盛りの世代の減少が国内市場の縮小を招き、経済力の低下が医療や福祉、教育など生活を支える基盤を衰退させ、負の連鎖に陥っていく。こうした地方の崩壊は想像に難くない現実であります。
このように、私たちを取り巻く社会は、多くの困難に直面しておりますが、一方で、新たな時代の到来を告げる出来事も相次いでおります。
昨年、株価は約30年ぶりに史上最高値を更新し、高水準の賃上げが実現するとともに、「金利のある世界」へ回帰するなど、我が国経済はデフレ脱却への大きな転換点を迎えました。中でも、高水準の賃上げの実現は、人口減少社会において一人ひとりの「人財」の活躍を促進し、経済の持続的な成長につなげるための重要な一歩であります。さらに、「2024年問題」などを契機に、固定化された商習慣を打破するコストの価格転嫁や、デジタル技術の活用などによる業務の効率化、多様で柔軟な働き方への改革が広がりを見せるなど、長年続いた硬直的な慣習や制度を断ち切る動きが生まれております。
こうした変化のうねりを、新しい時代の希望や活力へとつなげ、困難を乗り越えていくため、私たちは、更なる挑戦を続けていく必要があります。変化の時代には、新しい可能性が生まれ、多くのチャンスが広がります。今こそ、現状維持を脱却し、一歩踏み出す勇気を持ち、輝かしい未来を切り拓くことが何より求められているのであります。
私は、知事就任以来、新たな時代の到来を見据え、「挑戦」「スピード感」「選択と集中」の3つの基本姿勢のもと、常に先手先手で、新たな施策を打ち出し、困難な課題にも果敢に挑戦してまいりました。
なかでも、企業誘致では、工業団地の分譲価格の見直しや全国トップレベルの補助制度の創設、約20年ぶりとなる県施行の工業団地開発などを果断に実行した結果、県外企業立地件数は7年連続で全国第1位となるとともに、知事就任以降7年間の累計で、県外企業立地件数は257件、工場立地面積は860ヘクタールといずれも全国第1位となり、設備投資額は累計で1兆円を超えるなど、他県に類を見ない成果を上げております。
また、戦略的なグローバル展開により、農産物や加工食品の輸出額は過去最高額を更新し、中でも、農産物の輸出額は知事就任前の13倍に拡大いたしました。加えて、農林水産物の高付加価値化に向けた取組が進展し、複数の品目において、農家1戸当たりの生産農業所得が知事就任前の1.5倍から2倍に増加しております。
さらに、3か年にわたる「茨城デスティネーションキャンペーン」を好機とし、差別化と創意工夫による稼げる観光地域づくりに取り組み、2023年の観光消費額は過去最高額を更新するとともに、「シン・いばらきメシ総選挙2024」では県内全市町村から新たな「食」の魅力が創出され、再集結イベントにも約2万6千人が来場し、各種メディアで100件以上取り上げられるなど、大変な注目を集めました。
こうした経済力を高める施策などを背景に、県民経済計算の全都道府県の推計結果における本県の1人当たり県民所得は、過去数十年の長きにわたり総じて10位台で推移してきた全国順位が、近年、着実に上昇し、昨年公表された2021年度の結果は、東京都、愛知県に次ぐ全国第3位と、県政史上、かつてない躍進となりました。
また、外国人住民も含めた本県の人口は、過去6年間にわたり、転入者数から転出者数を差し引いた「社会増加数」が全国上位で推移し、東京都や大阪府などの大都市圏に次ぐ「社会増」が定着しつつあるなど、次々と成果が現れてきております。
一方、私は、困難かつ中長期にわたる課題も決して先送りせず、正面から取り組むことにより、県央・県北地域の医療提供体制の確保に向け、県立中央病院及び県立こども病院の統合を含む水戸保健医療圏の病院再編に向けた道筋を示すとともに、救える命が救えなくなる事態を回避するための先手先手の対策として、大病院において緊急性が認められない救急搬送者からの「選定療養費」の徴収を開始し、救急医療のひっ迫緩和に一定の効果を上げております。
また、次世代を担う「人財」の育成に向け、昨年4月から、平日に学校外で保護者などと体験的・探究的な活動をする「ラーケーション」制度を導入し、児童生徒の利用が約5万5千件に達するなど、子どもたちが自ら未来を切り拓くための多様な学びの機会が広がっております。
このように、県民の皆様とともに成し遂げた数々の挑戦と成果により、本県は大きく飛躍し、その潜在能力の高さが改めて証明されたものと考えております。
今後、本県の潜在能力を更に大きく開花させ、加速度的に進む人口減少時代にあっても、輝かしい未来を掴み取るためには、本県経済の成長を一段と加速し、豊かで経済力のある社会を構築することにより、安心安全につながる生活基盤をしっかりと確保していく必要があります。さらに、全ての礎となる多様な「人財」の活躍は何より重要であることから、多くの人材を惹きつけ、誰もが能力と意欲に応じて活躍できる社会の実現に取り組んでまいります。
まず、経済力の強化に向けては、持続的な賃上げを通じた経済の好循環が安定して実現するよう企業の取組を強力に後押しするとともに、利益率の高い職場を創出するための戦略的な企業誘致や、差別化と高付加価値化による儲かる農林水産業の実現、海外の活力を取り込むための企業の海外展開支援、インバウンド誘客などを加速させることにより、経済の自立的な発展につなげてまいります。
また、安心安全につながる生活基盤の確保に向け、県立病院の統合を含む水戸保健医療圏の再編協議など医療提供体制の充実・強化に加え、水道の持続的な供給体制の確保などに取り組むとともに、ソフトとハードの両面からの防災・減災対策を加速してまいります。
さらに、多様な「人財」の活躍に向け、特色ある「選ばれる」学校づくりや多様な才能を伸ばす教育への取組など、魅力ある教育への改革や、ダイバーシティの推進により、多様で有能な人材の活躍を促進してまいります。
加えて、深刻な人手不足を踏まえ、優秀な外国人材の確保・育成を進めるとともに、外国人の方々が地域社会に溶け込み、共に成長する社会の実現に向け、働きやすく、住みやすい環境を整備し、世界から「選ばれる」県づくりを加速してまいります。
今後とも、「挑戦」「スピード感」「選択と集中」の3つの基本姿勢を徹底し、人口減少時代を勝ち抜き、次世代に誇れる茨城を引き継げるよう、県民一人ひとりが変化を恐れず、未来を切り拓く「新しい茨城」づくりに全力で取り組んでまいります。
今回提案する令和7年度当初予算は、経済の好循環に向けた緊急対策として、令和6年度最終補正予算と合わせて、企業の賃上げや処遇改善、価格転嫁への支援に加え、物価高対策に積極的に取り組むとともに、本県の潜在力をさらに大きく開花させていくため、「新しい茨城」づくりへの挑戦として、「新しい豊かさ」、「新しい安心安全」、「新しい人財育成」、「新しい夢・希望」の4つのチャレンジに取り組むための施策を取りまとめたものであります。
一般会計予算の総額は、1兆2,636億94百万円であり、令和6年度当初予算と比較して1.0パーセント、125億4百万円の増となっております。
歳入につきましては、定額減税の終了に伴う個人県民税の増などにより、県税収入を200億円増、4,380億円と見込んでおります。また、地方財政計画を踏まえ、普通交付税を64億円増の2,011億円と見込む一方で、臨時財政対策債については、2001年度の制度創設以来、初めて発行しないこととしております。
この結果、実質的な一般財源の総額につきましては、2.9パーセント、214億円増となる7,627億円を計上いたしました。
一方、歳出につきましては、社会保障関係費が、4.8パーセント、81億円増の1,760億円となっております。公共事業費は、企業会計を含む公共事業全体で、0.4パーセント、5億円増の1,106億円となっております。
特別会計は13件で、総額4,733億50百万円、4.7パーセントの減、企業会計は6件で、総額1,403億28百万円、3.3パーセントの増となっております。
次に、令和7年度の主な施策について、関連がありますので、令和6年度補正予算関連施策も含めながら申し上げます。
まず、経済の好循環に向けた緊急対策についてであります。
物価高が続く中、物価上昇を上回る持続的な賃上げを通じて、経済の好循環を安定して実現していくことが極めて重要であることから、中小企業の賃上げ支援に加え、適切な価格転嫁や生産性の更なる向上を強力に後押しするとともに、足元の物価高に大きく影響を受ける事業者や生活者をしっかりと下支えしてまいります。
このため、最低賃金水準で雇用される労働者の大幅な賃上げを目指し、一定額以上の賃上げを行う中小企業に対し支援金を支給するとともに、生産性向上のための設備投資を支援することなどを通じ、物価上昇を上回る賃上げを加速させてまいります。
また、中小企業の適切な価格転嫁を促進するため、専門家を派遣し、価格交渉のノウハウを提供するなど、プッシュ型の伴走支援を実施するとともに、価格転嫁が進まない事案に関する相談窓口を設置するなど、企業の取組を強力に後押しするほか、社会全体での意識改革と機運醸成に力を入れて取り組んでまいります。
併せて、物価高や運転士不足の影響を受ける交通事業者について、運賃改定や業務効率化などによる経営改善を後押しするため、運行管理システムの導入や省エネ化によるコスト削減などDXやGXの活用のほか、運転士の確保に向けた取組を支援してまいります。
一方、価格転嫁が困難な業種などの事業者や生活者への支援を早急に実施するため、介護施設職員などの処遇改善や、医療機関・福祉施設などの光熱水費や食材料費の支援、LPガス使用世帯への支援などに取り組むための令和6年度補正予算案を今定例会に追加提出する予定としております。
次に、4つのチャレンジによる「新しい茨城」づくりに向けた施策について申し上げます。
第1は、新しい豊かさについてであります。
まず、質の高い雇用の創出等についてであります。
若者が望む質の高い雇用の創出に向け、半導体や次世代自動車関連などの成長産業をはじめ、給与水準や利益率の高い、高付加価値な産業への戦略的な企業誘致を展開してまいります。
将来にわたり本県の発展を牽引し、産業集積や雇用の好循環を生み出す核となるグローバル企業のフラッグシップ拠点の誘致を図るため、全国トップクラスの補助制度について、1件当たり最大補助額100億円へと拡充いたします。
また、産業用地の供給につきましては、県施行の工業団地「フロンティアパーク坂東」において順次公募を進め、昨年12月には約16ヘクタールの画地に立地企業が決定したところであります。さらに、来月には、常陸那珂工業団地拡張地区において、約9.4ヘクタールの画地について第1次公募を開始いたします。引き続き、企業の立地ニーズを的確に捉えた戦略的な誘致活動と産業用地の整備を進め、1社でも多くの優良企業の立地を実現してまいります。
産業を支える人材の育成・確保につきましては、高度デジタル人材の育成を図るため、県立産業技術短期大学校、いわゆるIT短大について、来年4月の「情報テクノロジー大学校」への移行に向け、新校舎の建設や開校準備を進めてまいります。
また、デジタル化に対応したものづくり人材の育成を図るため、2028年4月を目途に、県内5か所の産業技術専門学院を2か所に再編し、先端分野の技能習得やリスキリング支援など、産業人材の育成拠点としての機能を強化してまいります。
次に、新産業の育成についてであります。
宇宙ビジネスの促進につきましては、昨年発足した「IBARAKIスペースサプライネットワーク」による受注拡大を図るなど、引き続き、県内企業による宇宙ビジネスへの参入促進や、宇宙ベンチャーの創出・誘致に取り組んでまいります。
また、ベンチャー企業の創出・育成を図るため、先端技術分野の起業家や研究者による投資家向けのプレゼンテーション機会を提供するとともに、ベンチャー企業の優れたサービスや製品の市場への普及拡大を目指し、県独自の事業者認定制度により認定した全ての事業者からの製品調達や、産業界とのマッチングを進めてまいります。
次に、強い農林水産業についてであります。
本県農林水産業の持続的な発展を図るためには、所得の向上を実現していくことが何より重要なことから、農林水産物の差別化や高付加価値化など収益性を高める取組や、気候変動の影響などにも対応した力強い事業構造への転換を加速してまいります。
トップブランド化を進めるメロンにつきましては、高価格品の栽培技術を意欲ある生産者へ普及するなど、本県産の価格向上に取り組むとともに、先月10日に開催した「全国ほしいもグランプリ2025」で本県産が上位を独占した干し芋につきましては、客観的な品質基準による認定商品の流通拡大や都内高級百貨店でのプロモーションに取り組むなど、引き続き、他の追随を許さない産地づくりを進めてまいります。
また、付加価値の高い有機農産物の供給能力や競争力の向上を図るため、他産地との差別化が特に期待されるかんしょや栗、そばの栽培や販路開拓などを支援し、有機農業先進県としての地位の確立を目指してまいります。
加えて、気候変動に伴う高温などの影響に左右されず、優れた品質の農産物を安定的に生産できるよう、メロンや米などオリジナル品種の開発などを進めてまいります。
常陸牛につきましては、ブランド力の強化に向け、従来の「霜降度合」によらず、牛肉の美味しさを重視した新たな格付基準を導入し、プロモーションを展開するほか、豚肉の「常陸の輝き」については、話題性のある取組により、ブランド価値を効果的にPRしてまいります。
林業につきましては、自立した林業経営の確立に向け、経営体のビジネスプランに基づく経営改善を支援するとともに、建築物の木造化の推進による県産木材の需要拡大に取り組んでまいります。
水産業につきましては、「常陸乃国しらす」など新ブランドの販路拡大や「常陸乃国まさば」養殖事業の商業化を進めるとともに、ブドウエビやボタンエビの養殖技術開発のほか、アメリカナマズなど未利用魚の食用利用に向けた供給体制を構築してまいります。
なお、高病原性鳥インフルエンザにつきましては、去る12月29日、八千代町の養鶏場において発生が確認され、自衛隊に加え、近隣市町や県内の幅広い業界団体のご協力を得ながら、約108万羽の殺処分を先月4日までに、養鶏場の消毒などの防疫措置を17日までに終えたところであり、引き続き、徹底した発生予防と防疫体制の強化に万全を期してまいります。
次に、ビジット茨城についてであります。
3か年にわたる「デスティネーションキャンペーン」を通じて生み出された本県ならではの観光コンテンツや各地域での意欲的な取組を活かしながら、本県の強みである「花絶景」や「体験」をテーマとしたプロモーションによるブランディングを推進するなど、国内外からの持続的な観光誘客と観光消費の拡大を図ってまいります。併せて、茨城県植物園について、「緑に遊び、緑に包まれて眠る、日本初の泊まれる体験型植物園」をコンセプトとした本年11月のリニューアルオープンに向け、開園準備に取り組んでまいります。
「シン・いばらきメシ総選挙2024」のグランプリグルメなどについては、首都圏の商業施設などでのグルメフェアの開催や、メディアを活用した集中的なプロモーションに加え、県内での提供施設の拡大を図るなど、本県の新たな「食」の観光資源として定着するよう取り組んでまいります。併せて、本年10月には、都内の駒沢オリンピック公園において、「シン・いばらきメシ」や本県の豊富な食材が味わえる「茨城をたべよう収穫祭」を開催し、「食」の魅力を強力に発信してまいります。
また、2回目となる「シン・いばらきメシ総選挙」の2026年秋の開催に向けて準備を進めており、魅力ある「食」の観光資源の更なる創出と一層の地域振興につなげてまいります。
次に、自然環境の保全・再生についてであります。
有害鳥獣や特定外来生物による生活環境や農作物などへの被害を防止するため、イノシシ、ニホンジカなどの捕獲やツキノワグマ侵入に備えた啓発に加え、報奨制度などを活用したキョンの侵入防止や外来カミキリムシへの啓発を進めるとともに、ナガエツルノゲイトウについては、甚大な被害発生の恐れがある繁茂か所での駆除を実施してまいります。
新たな産業廃棄物最終処分場につきましては、事業主体である茨城県環境保全事業団において建設工事が進められており、引き続き、安全性の確保を最優先とし、 2026年度末の供用開始に向け、着実に整備を進めてまいります。
第2は、新しい安心安全についてであります。
まず、県民の命を守る地域保健・医療についてであります。
人口減少・超高齢社会の更なる進展を見据えた医療提供体制の構築は喫緊の課題であり、特に、水戸保健医療圏においては、県北地域の医療の一端を担う中、急性期病院間の機能分化や連携が進まず、高度急性期・回復期病床の不足や施設の老朽化など多くの課題を抱えております。
このため、医療圏内の6つの病院を2つの拠点病院を中心とした病院群に再編し、そのうち1つは県立中央病院及び県立こども病院の統合により、がんや小児・周産期に係る高度医療を提供する拠点病院として、広く県央・県北地域の高度急性期医療へ対応するとともに、安定的な医師確保につなげてまいります。今後、県立の拠点病院については、10年以内の開院を目指し、基本構想の検討に着手するとともに、他の4病院については、統合や機能分化に向けた協議を加速させ、限りある医療資源の有効活用による医療提供体制の充実・強化に全力で取り組んでまいります。
一方、医師確保につきましては、引き続き修学資金貸与制度などにより、将来の地域医療を担う医師の養成と定着に努めるとともに、昨年末に国から示された「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を踏まえ、「医師偏在是正プラン」の策定など具体的な取組について医療関係者との協議を進めてまいります。
また、看護師には年々高い専門性が求められていることから、県立中央看護専門学校の看護学科を4年制に移行し、来年4月に「県立看護大学校」として開校するため、環境整備を進めてまいります。
次に、健康長寿日本一と福祉の充実についてであります。
生涯にわたり健康を維持するためには、歯と口腔の健康を保つことが重要なことから、むし歯予防に効果のあるフッ化物洗口について、小学校において準備や片付けなどに対応する教員業務支援員の配置を新たに支援するなど、就学前から小学校段階にかけての継続的な取組を推進してまいります。
あすなろの郷の再編整備につきましては、県立のセーフティネット棟の建設工事が順調に進んでおり、本年9月の供用開始に向け、引き続き、県と民間事業者の連携のもと、入所者の円滑な移行に向けてしっかりと取り組んでまいります。
次に、安心して暮らせる社会についてであります。
安心して暮らせる社会の基盤となる上下水道事業の経営環境は、加速する人口減少に加え、老朽化施設の更新や耐震需要の増加などにより厳しさを増しております。
このため、上水道につきましては、2022年に策定した「茨城県水道ビジョン」に基づき、スケールメリットを活かした広域連携に向けて調整を進めてきた結果、本日、21の市町村とともに、県企業局を統合先とする「経営の一体化に関する基本協定」を締結することとなりました。今後、水道法に基づく広域的連携等推進協議会のもと、業務運営や施設整備といった統合の諸条件に係る協議を進めるなど、上水道の持続可能な供給体制を確保してまいります。
また、この度の協定締結に伴い、県企業局の県中央広域水道用水供給事業については、将来の水需要が施設整備当初の計画と比べ、減少する見通しが明らかとなったことから、資産価値を見直すため、会計上の減損処理を行うとともに、料金の値下げを実施することで、受水市町村の負担を軽減し、経営基盤の強化を図ってまいります。
一方、下水道につきましては、先月28日に発生した埼玉県八潮市での道路陥没事故を受け、直ちに県独自の緊急点検と市町村への注意喚起を実施したところであります。緊急点検の結果、異状がないことを確認しておりますが、引き続き、各種点検・調査や老朽化対策に計画的に取り組むなど、県民の安心安全を確保するとともに、 2023年に改定した「生活排水ベストプラン」に基づく事業の広域化や共同化を推進し、安定的・継続的な運営に万全を期してまいります。
次に、災害・危機に強い県づくりについてであります。
頻発化・激甚化する自然災害から県民の命と暮らしを守るため、先手先手の防災・減災対策や万全の備えを進め、災害への対応能力の向上を図ってまいります。
水害からの逃げ遅れによる人的被害ゼロを目指し、市町村との連携のもと、来年度中に自主防災組織など地域の関係者による避難行動要支援者の支援体制を全市町村において整備するとともに、本年も7月までに、洪水ハザード内の全ての住民の方を対象とした訓練を実施するなど、適切な避難行動につなげてまいります。
また、避難所における良好な生活環境を確保するため、簡易ベッドの備蓄を図るほか、引き続き、民間事業者との協力体制を構築し、清潔で快適に使用できる仮設トイレや女性避難者に配慮した物資の確保、キッチンカーの派遣などを進めるとともに、今後も市町村に対し、避難所となる公立小中学校体育館への空調設備の整備を働きかけてまいります。
併せて、災害時における避難指示など住民への情報伝達について、従来の広報手段に加えて、テレビの双方向機能やスマートフォンアプリを活用した伝達手法も検証しながら、充実させてまいります。
さらに、豪雨による盛土等の崩壊や崖崩れなどの被害を防止するため、本年4月1日から、宅地造成及び特定盛土等規制法に基づく盛土等の許可が必要な規制区域として県内全域を指定するとともに、警察や市町村など関係機関と連携し、監視体制を強化してまいります。
こうした取組に加え、「田んぼダム」の計画的な整備をはじめ、ハードとソフトが一体となった流域治水対策を推進するとともに、木造住宅の耐震化に係る支援の拡充や、公共施設の耐震化、緊急輸送道路の整備に取り組むなど、防災・減災対策を加速してまいります。
第3は、新しい「人財」育成についてであります。
まず、次世代を担う「人財」と魅力ある教育環境についてであります。
意欲ある中高生を対象にトップレベルの学習機会を提供するプログラミング・エキスパート育成事業につきましては、新たにAIシステム開発技術の習得などに対応するほか、つくばサイエンス高校及びIT未来高校では、企業との連携による実践的なAI教育を導入するなど、グローバル社会で活躍する人財の育成に努めてまいります。
また、つくばサイエンス高校を拠点に、大学や研究機関と連携し、小中高生を対象としたサイエンス実験・体験教室を開催するなど、科学への興味関心や探究力を引き出し、本県の将来を支えリードする人財を育成してまいります。
次に、日本一、子どもを産み育てやすい県についてであります。
子ども・子育て施策につきましては、国が策定した「こども大綱」を踏まえ、「こどもまんなか社会の実現」を基本目標とし、子どもや保護者など当事者の意見を取り入れながら、子どもの権利の尊重や児童虐待防止に加え、結婚、妊娠・出産から子育て期までの切れ目のない支援の充実を目指し、来月末を目途に「茨城県こども計画」を策定してまいります。
このうち、妊娠・出産から子育て期までの支援につきましては、新たに、不妊治療のうち、保険適用外となる先進医療に係る費用を助成するほか、新生児の先天性疾患を早期に発見・治療するため、2つの疾患に対する検査費用の負担軽減を図るなど、出産の希望がかない、すべての子どもが健やかに成長できる環境づくりに取り組んでまいります。
次に、外国人材の活躍促進についてであります。
優秀な外国人材の確保につきましては、インド人材に焦点を当て、現地大学の日本語講座を通じて育成した学生に対する県内企業でのインターンシップの実施などに加え、外国人材支援センターに現地事情などに精通した専門アドバイザーを配置し、県内企業への就職マッチングを強力に支援することにより、円滑な受入れから定着へとつなげてまいります。併せて、介護人材の確保については、引き続き、介護事業者を対象としたインド人材受入れに関するセミナーや現地視察を実施するほか、現地の人材送出機関との関係構築などを支援してまいります。
また、外国人材が持てる能力を十分に発揮し、安心して働くことができる環境づくりを目指し、外国人材を積極的に受け入れ、共に成長する優良企業の認定制度を創設し、その取組を県内全体へと広げてまいります。
一方、本県では、2023年の不法就労者数が全国最多の約2,700人となっており、外国人材の適正雇用が急務であることから、雇用主の意識啓発に向け、産業界全体での対応を促す「外国人適正雇用推進宣言」制度を創設するとともに、県警察本部や東京出入国在留管理局などと連携した合同パトロールや、事業者訪問を実施するなど、適正雇用促進キャンペーンを展開してまいります。
外国人の方々が安心して生活できる環境の充実につきましては、「IBARAKIネイティブコミュニケーションサポーター」を順次増員するほか、本県での生活を円滑に開始できるよう、自動車運転免許の取得について、オンライン通訳や予約システムを導入し、外国人が申請する際の負担軽減を図ってまいります。
また、外国人児童生徒が安心して学ぶことができる教育環境の整備を図るため、外国人児童生徒が多い8市町の小中学校50校程度に日本語支援員を配置し、児童生徒が地域で共生するための支援体制を充実してまいります。
次に、自分らしく輝ける社会についてであります。
一人ひとりが尊重され、誰もが個々の能力を発揮できる、いわゆるダイバーシティ社会の実現を図るため、ダイバーシティ推進センターにおいて、県民や企業経営者への意識啓発を強化するとともに、県内企業へのコンサルティングやオンライン学習コンテンツの提供などを通じ、多様性を認め合い、誰もが活躍できる社会の実現に取り組んでまいります。
また、障害の有無に関わらず、個性と能力を発揮できる社会を実現することは、障害者の社会的、経済的自立への意欲を高めるだけでなく、社会全体の多様性を広げ、新たな価値の創出につながることから、障害者の文化・芸術、スポーツ活動に着目し、パラアーティストの発掘・育成に向けたワークショップや個展の開催、企業とのコラボレーション商品の企画化に取り組むとともに、パラアスリートのスポンサー企業獲得への取組を支援してまいります。
第4は、新しい夢・希望についてであります。
まず、世界に飛躍する茨城についてであります。
急激な人口減少による経済規模の縮小に直面する中、成長する海外の経済力を取り込み、稼ぐ力を強化するため、本県のグローバル化を加速してまいります。
先月23日及び24日には、私自ら台湾を訪問し、農産物や加工食品などのトップセールスを行った結果、現地大型量販店での「茨城県フェア」の開催に大変前向きな回答を得ることができたほか、渡辺直美さんを起用した台北駅での誘客プロモーションは各種メディアで100件以上取り上げられるなど、盛況のうちに終えることができました。引き続き、市場ニーズを的確に捉えた戦略的な営業活動により、県産品の新たなマーケットを獲得してまいりますとともに、台湾や韓国を中心に、「花絶景」やゴルフなど、本県の強みとなるコンテンツを活かした戦略的なプロモーションを展開し、インバウンド誘客を加速してまいります。
また、茨城空港では、国際線の定期便再開やチャーター便の就航により旅客数が着実に増加しているほか、茨城港では、来年度、過去最多となる8隻の外国クルーズ船が寄港する予定となっております。引き続き、航空路線の拡充や外国クルーズ船の誘致に精力的に取り組み、インバウンド需要の更なる獲得と交流の促進につなげてまいります。
さらに、競争力ある製品や高い技術力を有する「ものづくり企業」の海外展開につきましては、専門家による伴走支援に加え、新たに米国で実施される展示会への出展を支援するとともに、世界に挑戦するベンチャー企業の創出に向け、米国の支援機関と連携し、海外投資家などに向けたプレゼンテーションの機会を提供するなど、引き続き、意欲ある挑戦を強力に後押ししてまいります。
次に、魅力発信No.1プロジェクトについてであります。
本県の魅力発信の強化を図るため、在京テレビ局を中心に積極的かつ丁寧な情報提供に取り組んだ結果、昨年度の本県情報のメディア掲載による広告換算額は165億円と3年連続で過去最高額を更新いたしました。引き続き、本県が誇る豊かな「食」をはじめとする様々な魅力について、アンテナショップ「イバラキセンス」も活用しながら、戦略的なパブリシティ活動に取り組んでまいります。
また、テレビ離れの傾向にある若年層への訴求を図るため、SNSでの情報発信を充実させるほか、人気VTuberグループと連携した観光地などの紹介動画の制作・配信や、それらと連動して誘客を図る新たな企画に取り組むなど、本県の魅力を幅広い世代にしっかりとPRしてまいります。
次に、活力を生むインフラと住み続けたくなるまちについてであります。
つくばエクスプレスのJR土浦駅への延伸につきましては、昨日、需要拡大や費用削減方策に加え、東京延伸との一体的な整備により、採算性や事業効果が向上することなど、詳細な需要予測に基づく県独自の検討結果を盛り込んだ事業計画の素案を策定いたしました。今後、延伸計画の具体化に向けて、更なる調査・分析を実施し、素案の磨き上げを図るとともに、国や関係都県、鉄道事業者などとの調整を進めてまいります。
県内の高速道路につきましては、圏央道において、つくば西スマートインターチェンジが来月23日に開通するとともに、4車線化については2026年度までの全線開通に向けた整備が進められ、来年度、つくば中央インターチェンジから牛久阿見インターチェンジ間などの開通が予定されております。また、東関道水戸線につきましては、2026年度の全線開通に向けた整備が進められておりますほか、昨年6月には、鹿嶋・神栖方面への延伸として期待される(仮称)鹿行南部道路の基本方針が策定され、道路計画の具体化に向けた検討が進められております。引き続き、国などに対し、整備推進を強く働きかけるなど、県内高速道路ネットワークの充実と利便性向上を図ってまいります。
茨城空港につきましては、民航機の着陸ルールの弾力化以降、国際線の路線拡充に加え、来月30日からは福岡便の1日2往復への増便が決定するなど、需要が拡大していることから、「茨城空港のあり方検討会」の議論を踏まえ、広く関東圏の観光・ビジネスを支える拠点となるよう、空港機能の強化や利便性の向上に取り組んでまいります。
港湾事業につきましては、茨城港、鹿島港において、岸壁や防波堤の整備など港湾の機能強化を進めるとともに、茨城港常陸那珂港区では、先月更新したガントリークレーン2基を活用し、荷役の効率化による安定した港湾サービスを提供してまいります。
次に、県北地域の振興についてであります。
県北地域ならではのアウトドアコンテンツである常陸国ロングトレイルにつきましては、国内外からの誘客促進に向け、ガイドマップの作成や旅行会社へのツアー造成の働きかけに取り組むとともに、新たに、トレイルコースと奥久慈里山ヒルクライムルートとを組み合わせた、バイクとトレイルランのサバイバルレースを開催するなど、話題性のある取組による一層の誘客と交流拡大を図ってまいります。
また、水郡線につきましては、地元高校生のアイディアを活かした企画列車の運行や、人気アニメなどを活用した沿線地域の周遊イベントを展開するなど、利用促進に取り組んでまいります。
さらに、主体的な地域づくりを進めるため、意欲ある中小企業のビジネスプランの磨き上げや新分野への参入を支援するほか、起業・定住の更なる促進に向けた地域おこし協力隊員の誘致や育成を図るとともに、日立市と日立製作所が協働で実施する「共創プロジェクト」については、医療・介護分野へのデジタル技術の活用や、再生可能エネルギーの地産地消に向けた取組を支援するなど、県北地域の発展はもとより、県全体の発展に資するよう積極的に取り組んでまいります。
こうした取組と併せ、「チャレンジプランNEXT」に掲げる取組を着実に推進し、県北地域が「活力があり、持続可能な地域」となることを目指してまいります。
次に、条例その他について申し上げます。条例は、新たに制定するもの2件、改正するもの19件、合わせて21件であります。
新たに制定する条例は、「児童福祉法に基づき一時保護施設の設備及び運営に関する基準を定める条例」などであり、一部改正を行うものは、「茨城県行政組織条例の一部を改正する条例」などであります。
条例以外の議案といたしましては3件で、「包括外部監査契約の締結について」などであります。
以上で、説明を終わりますが、なお詳細につきましては、議案書などによりご審議の上、適切なご議決を賜りますようお願い申し上げます。