1.名前を調べる相談
(1)対応件数と種数
件数:1,855件 種数:5,352種(うち毒きのこ620種)
(2)相談の多い種別相談件数(食用,有毒種上位各5種)
食用: ウラベニホテイシメジ (180件)
ハタケシメジ (149件)
ヒラタケ (120件)
チチタケ (106件)
ムラサキシメジ (101件)
有毒:クサウラベニタケ (175件)
ハイイロシメジ (101件)
カキシメジ(57件)
ハナホウキタケ (55件)
ニガクリタケ (31件)
今回の野生きのこ相談において,最も多かったものはウラベニホテイシメジで180件である。昨年まで4年連続で1位だったハタケシメジは2位となった。チチタケは長期的な発生により,相談順位が4位と,初めて5位以内にランキングされた。昨年2位であったムラサキシメジは,発生期間が短かったせいか,5位となった。食用きのこの相談件数は全体の半数近くにのぼり,上位にランクされているものが茨城県民がきのこ狩りの対象として好むきのこであることは明らかである。
毒きのこでは,クサウラベニタケが175件で最も多く,昨年に引き続きハイイロシメジが2位であった。ハイイロシメジは,晩秋に大量に発生しホンシメジやシロシメジに似ているため相談が多くなっている。食用とされている図鑑等もあるが,時に中毒をおこすことがあり、新潟県では毒きのことして扱っているので注意が必要である。毒きのこの全相談に対する割合は約12%で,昨年よりわずかに減少した。
2.食中毒発生状況
(1)・10月12日に,鉾田市在住の家族4人が,祖父が採集したきのこを混ぜご飯に調理して食べた。父母と息子の3人が,30分後にむかつきはじめ,嘔吐を繰り返したため,行方総合病院で治療を受け入院した。翌日は,水様の下痢を呈した。林業技術センターできのこを同定したところ,クサウラベニタケによる中毒と判明した。
・10月18日,筑西市の男性が,近隣の山で採取したきのこを,同日午後7時ごろ自宅で混ぜご飯に調理し,家族4人で食べた。この内の女性3名が,約2時間後吐き気や嘔吐の症状を呈し,つくばメディカルセンターへ入院した。林業技術センターできのこを同定したところ,クサウラベニタケによる中毒と判明した。
解説:
クサウラベニタケは,食用きのこのウラベニホテイシメジに似ており,雑木林に発生時期も同じくして多く発生するために誤って採集される。また,「地味なきのこ,縦にさけるきのこ」であり,いかにも食べられそうであるため,中毒例が多いと考えられる。今回の中毒の一例には,食用のウラベニホテイシメジと毒のクサウラベニタケが共に混ぜご飯に混入していた。採集者はウラベニホテイシメジのみを調理して中毒せず,譲渡先で中毒が発生している。このことから,採集者は他の毒きのこの混入の可能性を考えて,知人に分けたり,知識のない人に調理を任せたりしないよう注意する必要がある。また,傘にでる斑や絣模様,傘の色など,ウラベニホテイシメジの典型的な特徴の揃ったものだけを採集することとし,食用目的であれば,不明種は採集しない決意も必要である。
(2)・10月28日に高萩市の男性が,知り合いからもらったきのこをみそ汁に調理して家族4人で食べた。この内,父親と男児が約30分後に吐き気,嘔吐,下痢の症状を呈し,男児のみが入院した。林業技術センターで,みそ汁の残りから採取したきのこの断片を,肉眼および顕微鏡で調べた結果,食用のニセアブラシメジと考えられるきのこに混じって毒きのこのカキシメジの可能性のあるサンプルが観察された。中毒の症状からもカキシメジの中毒であると推定された。
解説:
カキシメジは,胃腸系の障害をおこす毒きのこで,いかにも食べられそうな外見をしている。また,本県では食用のニセアブラシメジを「かきしめじ」と称することが多いために,混同されている可能性もある。カキシメジは,傘は褐色でぬめりがあり,ヒダに特徴的なシミがあることが多い。また,今回の中毒もおすそ分けによるもので,もらった野生きのこであっても、自分で食毒が判断できないものは,信頼できる同定機関に相談する等の注意が必要である。
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